デザインミュージアムはロンドンのケンジントンにある、工業製品や建築、乗り物、グラフィック、ファッションなどの「産業デザイン」に関する企画・常設展を行っている博物館です。
コンラン・ショップで有名なテレンス・コンラン卿によって1989年に開設されたミュージアムで、ケンジントンに移設される前はバトラーズ・ワーフという地区にありましたが、スペースの不足が深刻化したために移転を計画し、 10年以上放置されてきたコモンウェルス・インスティチュートを改修して2016年にオープンしました。

デザイン・ミュージアムの外観です。外観からも感じられるように、うねるような屋根が特徴的な建築です。

屋根の形状とマッチしたランドスケープ。アイストップになるところには噴水があり緩やかにエントランスに誘導してくれます。
大屋根を活かした吹き抜けギャラリー空間

エントランスを抜けると3層吹き抜けの大空間と大階段が迎えてくれます。天井はRCの面と鉄骨と天井仕上げの2種に分割されています。改修された内部空間は、特徴的な天井をそのままに、白い天井と木調の壁で柔らかな印象の内部空間となっています。

最上階から中央の吹き抜けを覗くと、回廊状のギャラリーがらせん状になっている構成がよくわかります。

場所によって屋根の見え方が変わるのが面白いところです。回廊状のギャラリーの外側には、カフェやライブラリー・スタディルームなどの施設が併設されています。

屋根を支える柱のそばまで行くと触れるくらいのところまで天井に近づけます。ここまでくると天井の仕上げがよくわかります。吹き抜けに面した中間のギャラリー空間は改修の歴史などが展示されていて、登り切った最上階には産業デザインの展示があります。
産業デザインの展示
スマホやパソコン、自転車や大量生産品としてのイスなど、一般的には芸術と呼ばれるものではないものが展示されています。日頃手にするこういった大量生産される工業製品がどのようにデザインされてきたのか、そしてデザインの変遷などが展示されています。ちなみに、この展示は常設されていて無料で観ることができます。企画展は別途地下で開催されていて、そちらは有料になっています。

デザイナーとメーカーとユーザー、一つの製品にかかわる重要なキャラクターである3つの立場。その3者をあらわすように、3角のモチーフで館内はデザインされています。

自転車や傘、バッグや工具など、職人や芸術家の手で作られたものではなく機械によって大量につくられるものが並んでいます。イギリスの地下鉄の看板もそのひとつ。

グラフィックやインテリアに関する展示も。

こちらはファッションに関する展示。

家電メーカーのコーナー。今は懐かしいマッキントッシュといったアップルの歴史やソニーの歴史を実物の製品を見て知ることができます。

併設のカフェ。天井仕上げは中央アトリウムの天井と同じ木毛セメント版。多くの人で賑わうミュージアムの内部において、出入り口から最も遠いところにありゆったりと落ち着いた時間を過ごせます。
産業デザインを鑑賞する博物館
デザインミュージアムには普段手にしながらも見落としがちな産業や工業によって生み出された大量生産品のデザインの価値を再認識させてくれる気づきのある展示を行なっています。イギリスといえば、大英博物館、ナショナルギャラリー、自然史博物館、テート・モダンと、博物館・美術館については見るに事欠かないですが、ロンドンに訪れたならばぜひデザイン・ミュージアムにも足を運んでみて欲しい隠れた観光名所です。
