松濤美術館-渋谷の奥の静寂の美術館へ-

【設計】 白井晟一
【所在地】東京都渋谷区松濤2-14-14[地図]
【用途】 美術館
【構造】 RC造
【面積】 敷地:1034.57㎡ / 延床:2027.18㎡
【竣工】 1980年

松濤美術館について

渋谷の喧騒を抜けた先、閑静な住宅街にこの美術館はひっそりと佇んでいます。狭い敷地と10mの高さ制限があるために地上はせいぜい2階が限界でした。そこで要求される美術館としての機能に必要な床面積を確保するために地下2階まで掘り下げ合計4層の構造になっているのが特徴です。その特徴は内部にも及んでいて、戦後の美術館でよく見られる整形で白い箱型の展示空間ではなく、中央から放射状に拡がるような形状をした場所性が介在するような展示室をつくりだしています。

正面ファサード

住宅に紛れるようにして姿を現す美術館。ガラスで中が見え入りやすい美術館と異なり、小さな入り口と大割の石が積み上がった重厚なエントランスになっています。この石は韓国原産の花崗岩で、建物の設計者である白井晟一によって「紅雲石」と名付けられています。

エントランスホール

エントランスの扉をくぐるとオニキスの光天井が出迎えるエントランスホールに。正面は後述の中央部の吹き抜けに、右手に受付に、左手に展示室へつながるロビー空間につながっています。

1階ロビー

住宅街にあることもあって周囲には閉じた外観をしていましたが、建物中央部には地下2階から上空へと抜ける楕円形の吹き抜けと、吹き抜けを取り巻く縦溝のついた14本のアルミ製の柱によって拡散された自然光の入る内部空間になっています。

中央の外部吹き抜け

長径約11m、短径約9mの楕円形の吹き抜けを囲うように回廊がまわり、そこにエントランス・ギャラリー・展示室・ロビー・ホールが取り付いています。吹き抜けを横断するようなブリッジが印象的ですが、回廊がまわっているので機能として必要なものではありません。ただ吹き抜けから回廊側を、そして楕円状に切り抜かれた空を見ることができる程度です。だからこそこの吹き抜けの空間にはなんとも言えない色気があるのかもしれません。

1階ロビー

石の空間はエントランスホールまで。ニュートラルなロビー空間には、中央の吹き抜けの形状に合わせた楕円形のピクチャーウィンドウから庭の景色と光を取り込んでいます。

内部階段

モルタル刷毛引き仕上げに、柔らかな照明の光が滑らかに反射する曲線が美しい階段。

2階ロビー

2階ロビーには回廊と吹き抜けを通して拡散された自然光が入り込みます。吹き抜けを挟んだ反対側に展示室空間があり、中央の楕円から放射状に伸びる木梁とベルベットの壁面による気品のある空間になっています。

DATA

【アクセス】
【開館時間】10:00~18:00(金曜日は20:00まで)
【休館日】 月曜日・祝日の翌日
【入館料】 展覧会による
※2019年1/1時点での情報です。
公式HP