根津美術館-大屋根をもつ庭と一体化したミュージアム-

【設計】 隈研吾
【所在地】東京都港区南青山6-5-1[地図]
【用途】 美術館
【構造】 S造、SRC造
【面積】 敷地:21,625㎡ / 延床:4,014㎡
【竣工】 2009年

根津美術館について

根津美術館はおしゃれなお店が立ち並ぶ南青山エリア。表参道のその先に今回ご紹介する根津美術館があります。根津美術館は施設の老朽化と展示スペース拡張のために2009年に隈研吾設計の元リニューアルオープンしました。

メインの入り口ににあるサイン。黒色と金色のルーバーが重なったようなデザインのロゴは、屏風をモチーフに文化が折り重なる様を表現しており、それぞれ根津の頭文字Nとミュージアムの頭文字Mを表しています。

エントランスをくぐると、美術館本館へと導く軒下小道が姿を現します。竹というフィルターによって都市の喧騒から切り離され、静謐な美術空間への期待を高めてくれます。玉砂利・石畳・竹という素材を使いつつも薄いスチールによる軒桁と木毛セメント版による軒下仕上げによって和風に染まり切らない空間になっていることで、表参道という街に対して違和感を感じさせずに着地しています。

竹のアプローチを抜けた先、曲がり角からエントランスにかけてスチールの表現に変わります。厚みのある竹の仕上げを薄いスチールプレートでおさえることでエッジの効いたシャープなディテールになっています。普段は雑多な印象をつくってしまう傘立ても、壁面に収納するというアイデアで隠しているのが上手いですね。

屋根は切妻の瓦屋根になっています。瓦屋根と言われるとどこか古臭さを感じてしまいますが、根津美術館の屋根はとてもモダンで美しいです。本来瓦屋根にも様々な装飾があるのですが、ここでは桟瓦だけにし、先端部分からはスチールに切り替えシャープなディテールにすることで軽やかで美しい屋根をつくり出しています。

エントランスの先のホール兼展示空間。霧妻屋根の形状をそのまま感じられる空間が魅力的です。ここを基点に各展示室や庭園、カフェ、講堂へアクセスします。

深い軒の先に美しい庭を背景にしたとても印象的な展示空間です。

展示室はシャープで美しい階段によって接続されています。

階段を上った中間階にある休憩スペース。屋根の勾配によって天井の低い場所のある居心地の良いスケールの空間になっています。

階段を上った先にある展示室前の通路から。ホワイエから見上げた時にガラスに黒いフィルムが貼ってあるように見えたところで、実際はロールスクリーンになっていました。遠くからは中は見えませんが、近寄った側にいると、ホールとつながっていることが感じられるという仕掛けになっています。

美術館の奥には四季折々の表情を持った美しい庭園が広がっています。

単なる和風建築になることを巧みにかわし、現代や周辺の環境に合わせて伝統建築の新たな可能性を模索していく。そんな意思が感じられる美術館でした。