ロンシャン礼拝堂-重厚さと軽快さが共存する神秘的な空間体験-

【設計】 ル・コルビュジエ
【所在地】13 Rue de la Chapelle, 70250 Ronchamp, フランス[地図]
【用途】 礼拝堂
【構造】 RC造
【竣工】 1955年

ロンシャン礼拝堂について

ロンシャン礼拝堂は、ノートルダム・デュ・オーという正式名称を持つカトリック・ドミニコ会の礼拝堂です。コルビュジエのサヴォワ邸などに見られた「近代建築の5原則」に基づいた合理性・機能性とは一線を画す作品で、彫刻的な曲面と丸みを持った外観と打ち放しのコンクリートとスタッコでできた厚くて白い壁が特徴的です。厚い壁には無数の穴が穿たれていて、はめ込まれた様々な原色のステンドグラスを通して差し込む外光の拡散によって神秘的な光の空間を演出しています。

大きな塊のように見える屋根はとんでもなく重そうに見えますが、実はシェル構造を採用して実際には薄くつくられています。壁とは縁が切れていて、壁の中に埋め込まれた柱によって支えられています。重量のある屋根と壁がくっついていると重たい印象になりますが、細いスリットによって縁が切られていることで、鈍重な印象を与えるどころかむしろ軽快な印象を受けることが不思議です。近年の建築は細く・薄くことで軽快さを表現することが多いですが、こんな表現もあるんですね。

厚い壁とは反対側の立面です。こちらは個室がある面なので、窓の部分を見てわかるように壁の厚さは一般的です。正面からは隠している柱をこちらの面からは見せているのが面白いです。

厚い壁を持つ建築ですが、出入り口は重厚ではなく大きな塊の隙間を通り抜けるように設けられています。厚い壁の間にコルビュジエ自身の原色抽象絵画の描かれた壁のように見える部分があり、それが中心軸吊りの回転扉になっています。

建築の裏側には屋根の雨水を受けて建築の外へ放出するガーゴイルが飛び出ています。このガーゴりは「象の鼻」とも呼ばれており、実際穴が二つあって確かにそう見えますね。その下にあるのが水受けなのですが、ちょっと位置が近すぎるような気もします。日本などは普通の雨などでも結構な勢いで水が飛び出していきますが、ロンシャンの地方はあまり豪雨などないのでしょうか。

礼拝堂内部は、深い壁を穿った穴から拡散しながら入り込む光で幻想的な雰囲気となっています。

厚い壁の開口部には原色のステンドグラスがはめ込まれています。こうしてみると、テーパーのかけ方も穴ごとで違っています。

建築内部からだと光のスリットによって屋根と壁の縁が切れていることがよくわかります。壁も下から上に向かって薄くなっています。

塔の部分から光を取り入れることで礼拝室に上部から柔らかな光が注ぐようになっています。