【設計】 本館:渡辺仁 / 増築部:磯崎新
【所在地】東京都品川区北品川 4-7-25 [地図]
【用途】 旧用途:住宅 / 現在:美術館
【構造】 RC造一部鉄骨造
【竣工】 1938年
邸宅を美術館にコンバージョンしたからこそくるのだろうか。不思議な居心地の良さからすっかり私のお気に入りの場所になった原美術館。2020年末に閉館になってしまうことが今更ながら悔やまれます。ここではそんなお別れが近くなってしまった原美術館についてご紹介します。
現代美術を中心とした展示を行う私立美術館として1979年に開館された原美術館。今でこそ美術館として有名ですが、もともとは実業家・原邦造の私邸として1938年に渡辺仁の設計によって竣工しました。原美術館はアール・デコの要素を取り入れたモダニズム建築で、中庭を柔らかく包み込むように緩やかな円弧を描いた平面形状も特徴的です。
閑静なお屋敷街に佇む

原美術館は品川と大崎の間にある御殿山と呼ばれる閑静なお屋敷街のなかに位置しています。邸宅部(美術館)はモダニズム建築らしくRC造なのですが、当時の周辺地域との調和をとるためか、大きな敷地と街路を隔てる塀は瓦を葺いた和風の土塀になっています。塀に沿って歩いていくと、一部分だけ真っ白に塗装された壁面が姿を現し、美術館がこの先にあるということを予感させてくれます。


かつては三井財閥の益田孝や三菱財閥の岩崎彌之助など、貴顕富豪の大邸宅が建ち並んでいたエリアには現在ミャンマー大使館や御殿山庭園があり今もなお屋敷街であった頃の雰囲気が残っています。
モダニズムにアール・デコの要素を取り入れた洗練された建築
設計者の渡辺仁(1887-1973)は「ゼセッション」「表現派」「日本趣味建築」「モダニズム」をはじめとした様々な建築様式を横断して活躍した人物でした。原邸は吹き抜けのある応接室・無装飾窓・大きなガラス開口・屋上庭園など、モダニズム建築の特徴をもった建築です。それと同時に、緩やかなカーブを持った空間のシークエンス、大理石やタイルといった素材、階段などに見られるディテールなど、アール・デコの要素を取り入れて、機能性や合理性に行き過ぎてしまう空間に自然な居心地の良さを生み出しています。


RC造に白い小口タイルに覆われたバウハウススタイルの外観、無装飾の窓やスチールとガラスのドアといったモダニズムの建築にアール・デコのエッセンスを感じさせるポーチがとてもよくマッチしていました。周囲の緑と補色の関係にある茶系の色大理石を用いていることで、柱の存在感が引き立っています。



中庭に面した1階部分には、磯崎新監修でレストランとホールが増築されています。









館内にちりばめられた現代アート作品
エントランスのアプローチ、館内、中庭には様々な現代アートが散りばめられています。館内のアートは、トイレや風呂場をアート作品にしたものなど、元邸宅ならではのアート作品が展示されています。館内と中庭は撮影禁止でしたので、アプローチ部分の作品をご紹介します。




-DATA-
原美術館
開館時間:11:00〜17:00 祝日を除く水曜日は20:00まで
休館日:月曜日、展示替え時期、年末年始
【URL】http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/